- コラム
2025.04.08
注文住宅が売れないのはなぜ?売却に苦戦する理由と高く売るための対策法
はじめに|注文住宅=資産価値が高いとは限らない
夢を詰め込んで建てた注文住宅。しかし、転勤、相続、住み替えなどの理由で売却を考えたとき、「意外と売れない」「思ったよりも安くしか売れなかった」と悩む人が少なくありません。
「自由設計だからむしろ人気なのでは?」という期待とは裏腹に、注文住宅は“中古で売れづらい”という現実が存在します。
この記事では、注文住宅がなぜ売れないのかという根本的な理由から、売却価格を上げるための対策、さらに「売れやすい注文住宅とはどんな家か?」について具体的に解説していきます。
注文住宅が売れにくい3つの理由
1. 個性が強すぎて“万人受けしない”
注文住宅の最大の魅力は、間取りもデザインも「自分好みに設計できる」自由度です。しかしこれは、中古住宅市場では逆に「購入者にとって魅力が感じにくい」「クセが強すぎる」とマイナスに働くことがあります。
たとえば以下のような間取り・仕様は、中古住宅購入希望者から敬遠される傾向があります:
- 家事導線が特殊で一般的でない
- 収納が少ない・極端な場所にある
- カラフルな壁紙や奇抜な外観
- 1階リビングがないなど生活しにくい構造
「自分にとって最高の間取り」が、「他人にとっては使いづらい」——これが注文住宅の売却における最大の落とし穴です。
2. 立地・周辺環境で比較されてしまう
住宅購入において立地は最重要要素のひとつです。どんなにこだわった注文住宅でも、周辺に駅近の建売や新築分譲があれば、価格と利便性で比較されてしまい、売れ残る原因になります。
さらに、注文住宅は郊外や地方に建てられることが多く、車移動前提の立地だと、「今後の資産価値が下がりやすい」と判断されることも少なくありません。
注文住宅は土地から探して建てるケースが多いため、建物自体の魅力よりも、土地選びの段階で流動性を失ってしまっていることもあります。
3. 「中古住宅=割安で住みたい」という意識と合わない
中古住宅を買う人は、基本的に「価格を抑えて家を買いたい」というニーズが強いです。注文住宅を建てた人にとっては、太陽光・全館空調・自然素材など「こだわり部分にお金をかけた分、評価してほしい」と考えがちですが、それがそのまま価格に反映されるとは限りません。
特に、築年数が10年以上経つと、設備や間取りが古く見えるケースもあり、フルリフォーム前提で考える買主からは「そこまで高く出す価値がない」と判断されがちです。
売れない注文住宅を高く・早く売るための対策
リフォームやハウスクリーニングで印象をアップ
第一印象は非常に重要です。壁紙の黄ばみ、フローリングのキズ、浴室のカビなど、「築浅でも劣化が目立つ」と感じさせる要素があれば、内覧時に即NGとなる可能性が高いです。
予算10~30万円程度で、クロス張り替えや水回り清掃、簡単な補修を行うだけでも、売却価格が数十万円アップしたり、内覧者の購買意欲が上がることは珍しくありません。
ホームインスペクション(住宅診断)で安心感を提供
「注文住宅=施工会社が有名だから大丈夫」と思いがちですが、中古市場では“見えない安心感”も重要です。
第三者機関によるホームインスペクション(建物検査)を行い、構造上の問題がないことを提示できれば、買主側の不安が和らぎます。築10年以内であれば、住宅瑕疵保険の付保やアフター保証の引き継ぎも検討しましょう。
不動産会社選びは「注文住宅の売却に強い会社」を
売却依頼する不動産会社によって、広告手法・見せ方・ターゲット設定が大きく異なります。建売・マンションの売却を主力とする不動産会社では、注文住宅の良さを理解してもらえず、ただ「クセが強い家」として扱われてしまうことも。
注文住宅の売却実績が多い会社、または建築士が在籍している会社であれば、「この家の良さをどう表現するか」に長けており、購入希望者に刺さる提案が可能になります。
売れやすい注文住宅に共通する3つの特徴
ここまで“売れない理由”を解説しましたが、反対に「売れやすい注文住宅」には明確な共通点があります。
1. 万人受けする「間取り」と生活動線になっている
中古市場で注文住宅が売れやすい条件の1つ目は、「どんな家族構成でも暮らしやすい汎用的な間取り」になっていることです。
たとえば以下のような要素は、買主にとって“選びやすい”ポイントとなります。
- 玄関からリビング、キッチン、洗面室へ回遊できる家事動線
- 1階にリビング+水回り+1部屋(将来的な寝室転用可)
- リビング階段、オープンキッチンなどコミュニケーションの取りやすさ
- 子どもの成長や独立に対応できる可変性のある子ども部屋
実際の中古住宅購入者の声として多いのは「生活動線がイメージしやすかった」「無駄な部屋がなかった」という意見です。逆に、趣味部屋が3つあるような特殊な間取りや、地下室、吹き抜け、ロフトだらけの家は“好き嫌い”が分かれやすく、売れ残るリスクがあります。
また、「収納の多さ」も非常に重要です。パントリー、シューズクローク、ファミリークローゼットなどが適所にあり、散らからない設計になっていると、それだけで「この家、住みやすそう」と好印象を与えることができます。
2. 立地条件+駐車場スペースが現代のニーズに合っている
2つ目の特徴は、「家そのものより土地の魅力」が高いことです。住宅は建物よりも立地とアクセス性のほうが資産価値に直結しやすく、購入者の第一判断軸もほぼここにあります。
例えば以下のような条件は、売却時の強い武器になります:
- 最寄り駅まで徒歩15分以内、またはバス便の利便性が高い
- 学校・スーパー・医療施設が近く、生活インフラが整っている
- 周辺に再開発計画や人口増エリアとしての将来性がある
- 接道幅が広く、車の出入りがスムーズにできる
- 駐車場が2台以上確保されている(並列駐車なら尚良し)
特に地方や郊外では、駐車場が足りない=売れない理由に直結します。「縦列駐車で不便」「来客用スペースがない」といった物件は、いくら家が良くても後回しにされやすいのが現実です。
土地が広い・整形地・日当たりが良いという要素は、仮に建物が古くなっても「建て替え需要」で資産価値が残りやすく、リセールバリュー(売却しやすさ)に直結します。
3. 定期的なメンテナンス・清掃がされていて「安心感」がある
3つ目の特徴は、「きちんと手入れされてきた家」であることです。買主にとっては「この家がどれだけ丁寧に使われてきたか」が、購入判断の大きなポイントになります。
次のような要素があると、売却時の信頼性が格段にアップします。
- 外壁や屋根の塗装メンテナンス履歴がある(10年周期など)
- 給湯器、エアコン、換気設備などの定期交換記録がある
- 排水管の洗浄やシロアリ対策など、長期的なメンテを実施している
- クロスやフローリングが大きく劣化していない(補修済み)
- 水回り(キッチン・浴室・トイレ)のカビやニオイが少ない
さらに、**定期点検報告書や住宅履歴書(維持管理記録)**が残っていると、「この家はしっかり管理されていた」と評価されやすくなり、価格交渉でも有利に働きます。
見た目の印象も大切です。例えば内覧前にプロのハウスクリーニングを入れるだけで、早期売却に繋がるケースも多くあります。壁紙のヤニ汚れやエアコンの黒カビなど、生活感が強く出ている箇所は、なるべく目立たないように整えておくことが重要です。
まとめ|注文住宅は売れにくいけれど、売れないわけではない
注文住宅は確かに「万人受けしにくい」ことから売却に時間がかかる傾向がありますが、それは必ずしも「売れない家」ではありません。売却時における見せ方・伝え方・整え方で大きく結果が変わるのが実際です。
「売れないかも」と諦める前に、まずは自分の家の強みと市場のニーズを冷静に整理し、戦略的に売却活動を行いましょう。